菊志んの志ん生レパートリーの中からまずは”お血脈”から始まった。 長野の善光寺のご本尊の由来から始まるどこまでが本当でどこからが作り話かわからない噺だ。最後は石川五右衛門が極楽へ行ってしまう。菊志んは五右衛門の表情に工夫を凝らしてその境目のところをうまくつないでいた。 華のある落語家、桂三木男は富士蕎麦の紅生姜天がうまいというまくらから”時そば”にはいった。ひいふうみいよういつむうななやあ今何時でい?へいここのつで。とおじゅういち…、という調子で一文ごまかす噺だ。 軽い調子で噺は進みいよいよ落ちに入ったところでトチってしまった。トチっても軽いフットワークで何事も無くやってしまうというのもこの落語家のいいところだ。 仲入り前にもう一度菊志ん。あさって芸術祭参加公演でやる”柳田格之進”のおさらいか。長い噺なので今回は前半のみ。後半はあさってのお楽しみというところだ。 ”火焔太鼓”は志ん生の得意中の得意の噺だけに作り方が難しかったと思うが無駄を省いて流れのいい話になっていたと思う。 今日4題目の噺は”粗忽長屋”。これが一番菊志んらしい噺だったように思う。行き倒れの人を見てここで死んでいるのは俺だ。だがそれを見ているのは誰だ。という不条理の噺で、”お血脈”同様落語でなければ聴けない話だ。 今日はたっぷり噺を聴いたのでおなかが空いた。落語カフェを出て新御茶ノ水駅方面へ歩いていると左側に富士蕎麦があった。メニューを見ると紅生姜天がある。夕飯前なので迷ったが三木男のお勧めもあり、食べて帰ることにした。
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