一番うしろの座席だったがオーケストラを聴くにはいい席だ。
創立30周年記念コンサートはピアニストの佐藤卓史を迎えてベートーヴェンの「皇帝」で幕開けだ。ピアノ協奏曲の中で最も荘厳な曲のひとつである。ピアノはこの日のために用意されたベーゼンドルファー"Concert Grand Model 280VC" である。荘厳な曲に華を添えるいい音であった。
アンコールは「エリーゼのために」。
休憩の後はボロディン作曲の「中央アジアの草原にて」。短い曲だが難しい曲なのだろうか。オーケストラはこの曲のエスニックで微妙な雰囲気を出し切れていなかった。
次はチャイコフスキー作曲の「1812年」 。LP全盛時代、オーディオ装置のテストレコードに使用されたほど低音から高音までまんべんなく散りばめられた曲である。特に後半の大砲の音はカートリッジ泣かせと言われていた。
弦楽器はまずまずだったが管楽器が弱かった。張り上げる部分と微妙な部分のメリハリが効いていなかった。大砲の音を大太鼓の音で代用していたのもいただけなかった。
アンコールの「ニムロッド」はこの曲の微妙な美しさを弦楽器が妖しく表現していた。このオーケストラの得意な曲なのだろう。
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