らくごマンから始まって品川心中(上)で終わったひとり会は昇々ワールド全開であった。
会場は中野駅から徒歩10分くらいのビルの地下。座席数60あまりの会場は普段は演劇の舞台に使われているのではないか。
薄暗いスタジオ風で5列目から階段状になっている。一番うしろの席からでも演者の顔はよく見える。というか普通に会話ができるほどである。
開場してからしばらくは男性は自分ひとり。女性率の高さは驚くほどだ。最終的には4〜5人ほどになった男性率は約10%だった。
マイルスのミュートトランペットの音が流れる中、上手から現れたのは白装束のらくごマン。頭には扇子を差し、背中には座布団をくくりつけ、帯をサスペンダーにしている。
軽いダジャレを混ぜたひとりコントをやった後退場。
はじめはシークレットゲスト。とはいっても笑福亭羽光だとわかっているからシークレットにならない。
噺は「たらちね」。先日春風亭一花で聴いたばかりだったからどういうふうに話すのか興味があった。落語は演者が違うとまるで違う噺のように聞こえる。羽光の噺は自然男性目線になる。
この噺は女性目線のほうが雅な感じがしていいと思った。
昇々の噺は「生徒と先生」、創作落語から始まった。どこにでも居そうな引きこもりの高校生と彼を学校に呼び戻そうとする先生の丁々発止の会話は迫力があった。
オチも厩火事風で心地よい余韻を感じた。
仲入り後は古典落語の「鈴ヶ森」。体育会の監督風の親分とアホな子分の泥棒のコンビが演じる噺は"てんぷくトリオ"が演じたらピッタリはまるほどコント的だ。
大笑いしたあとトリはネタおろし、「品川心中(上)」となる。
この情緒的な噺を昇々はドタバタふうに演じる。落語家によってはアクの強い花魁と頭の弱い客のやりとりが主題となる噺だが、昇々は花魁と客の駆け引きよりも状況のおかしさを強調する。
盛りを過ぎた花魁のジリジリするような焦燥感はあまり感じられない。昇々が今日の観客のような若い男女(特に女性)に人気があるのは彼がイケメンであるだけではなく彼のやり方にも一因があるように思った。
地下の会場から地上に出たら道路は大雨が降ったあとのように濡れていた。蒸し暑かった空気は若干しのぎやすくなっていた。
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