谷中のパン屋の2階で月に一回やっている「谷中はなし処」の拡大版である。
600席あまりの座席はほぼ満員だ。みんな誰を目当てに来たんだろう。
前座は萬橘の弟子まん坊で「黄金の大黒」。前座噺ではない。長い噺のうち羽織を着て大家さんに挨拶に行くまでで終わりにした。定石通り「冗談言っちゃいけねえ」で噺を切った。
続いては三遊亭萬橘で「真田小僧」。ざっくばらんなまくらから本題に入った。やりようによっては嫌味な話になるところも萬橘がやると嫌味にならない。下手な落語家がやるとこまっしゃくれた小僧にもなるが萬橘がやると知恵のある小僧になる。ざっくばらんなところが功を奏している。
次は林家たけ平で「目黒のさんま」。手垢のついた噺をなんとかしようとして成功しなかった。客と一緒に盛り上がろうとして客に見放された。落語家は客に頼るより自分のセンスを信じて戦うしかない。
仲入り後は3人によるコント「透視術」。萬橘が透視術をあやつる怪しい先生、志の春がその弟子、たけ平が客の役。おもしろかった。
トリオ名「オーパーツ」は「out-of-place artifacts」を略して「OOPARTS」とした語で、「場違いな工芸品」という意味である。最近米国で広まっている言葉らしい。名付け親はイェール大学卒業の志の春ではないか。
トリは立川志の春で「井戸の茶碗」。真打ち二人を前において二つ目が堂々のトリ。10年前ならありえなかった。最近は二つ目の勢いが顕著で実力のある二つ目が独演会を開いて完売になることは珍しいことではない。
志の春の「井戸の茶碗」は正統的でトリにふさわしく笑いと感動を与えてくれた。
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