お馴染みのスペシャル・ビッグバンドである。会場はサントリー・ホール。以前なら日比谷野外コンサート会場でやるところだ。 最近は演奏者も観客もレベルが上がって来ている。演奏者は紫綬褒章を受章しているし、観客もセレブが多い。
第1部は最近よくやっている曲、第2部は昔やった曲という構成で進んだ。
ボレロは何回聴いても良い。この曲はジャズに合っている。特に全員がクライマックスになだれ込んでいくところは山下ジャズの真骨頂だ。
組曲 山下洋輔トリオは今や伝説となったトリオ時代の曲を松本治が編曲したもの。あの暴力的とも思えた「クレイ」や「グガン」、怪しげなメロデイ「ミナのセカンドテーマ」が額縁の中に入れられたようにおとなしく収まっていた。山下の肘打ちもこころなし穏やかになったような気がした。
アンコールはビッグバンドの定番「A列車で行こう」。
山下洋輔、76才。数多くの冒険をして来た。日本最初のフリージャズ・トリオの結成、数々の異種音楽家との共演。発生し、発展し、変成し、成就する。人間である限り終わりがあるのは仕方のないことだ。いつまでも幼稚ではいられないし、乱暴なことばかりもしていられない。われわれはかれら表現者の行為を鑑賞しながら自分たちの人生を確認しているのかもしれない。
会場を出たらムッとするほどの熱気が残っていた。夏真の宵。あちこちに散っていく観客たち。バス停にいく人、地下鉄に向かう人。今日の観客はどういう人たちだったろう。若い頃全共闘びいきだったのが大企業に入りそれなりに出世して余裕のある暮らしをしている。そういうセレブたちがいっとき昔を思い出すために足を運んだのだろうか。
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