雨の土曜日、神保町の落語カフェに出かけた。 開口一番のトークで鬼丸と小せんがその日にかける演目を何にするかを決める動機を語ってくれた。まず鬼丸が秋の雨の降る日は笠碁をやるのに決めている、と語った。それでも意外に秋、雨の降る日に高座のある機会は少なく今日は3年ぶりくらいだという。春の雨が草木が萌え立つように感じるのに対して秋の雨の日は人恋しくなるからだという。小せんは秋は秋刀魚だから普通は”目黒の秋刀魚”をやるのだろうが、ここはあまり演じられることの無い”秋刀魚火事”に挑戦したいと言った。今日はどうしてこの演目を高座にかけたいか、というのは聞くほうにとっても興味のあることなので面白い試みだった。
鬼丸の”笠碁”は良かった。秋の雨の日の人恋しさがにじみ出た噺だった。 残念だったのは碁敵同士が隠居の身なのに啖呵を切ったときなど壮年のように見えることがあったのと時々どちらがどっちの隠居だかわからなくなるときがあった。
小せんの”蒟蒻問答”と”秋刀魚火事”は可もなく不可もなく無難にこなしたという感じだった。 トリは鬼丸の”付き馬”で熱演だった。 残念だったのは廓の客と付き馬の笑い顔が同じだったことで、小三治クラスになるとそれぞれの正確に応じて笑い顔も違っている。 鬼丸と小せんは2人とも大卒で落語界入りも同期の42才ということである。上り調子の噺家なのでいずれ名人と呼ばれるようになってほしい。
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