全国ツァー初日である。何故かよみうりホールではなくかめありリリオホール。地味なスタートだ。筆者の経験ではここリリオホールは全国のホールの中で客席の傾斜が一番きつく前の人に邪魔されずに安心して舞台を観ることができる。普通の会場は前の席は平らで10席目くらいから傾斜が始まる。ここは2席目から傾斜が始まる。平らなところが一箇所もない。
舞台に登場したのは普段着の一之輔。ベレー帽にポロシャツ、ジーパンという格好は以前春団治の映画会のゲストで登場した時と同じだ。今日から始まるツァーへの意気込みと近況をいつものゆるい調子で話し始めた。一之輔は普通の話も面白い。
前座の一花は二つ目になったらしい。噺は「真田小僧」で前座噺である。独特のとぼけた味を持つ落語家だ。雰囲気が一之輔に似ている。
一之輔の初日一席目は「めがね泥」、初めて聴く噺である。冒頭泥棒の親分と子分の会話で始まるから「鈴ヶ森」かなと思った。泥棒たちが町内から出る様子がない。あれ、違う噺かな、と思ったら町内のめがね屋を覗き始めた。これは違う。色々な泥棒の話があるものだ。
楽屋へ引っ込まずに2話目を始めた。父親と息子が2階と1階で話をしている。「2階ぞめき」かな、と思ったら息子が銭湯に出かけた。どうも違うようだ。替え玉を2階に置いて自分は吉原へ行くようだ。これまた初めて聴く噺だった。落語では放蕩息子が吉原へ行く噺はたくさんある。
トリは「花見の仇討ち」。長屋の連中が上野の花見に出かけ仇討ちの芝居を打とうとするが例によって食い違い大変なことになる。一之輔の切れ味の良い演出で会場大爆笑。
初日の舞台は大成功となった。
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