神田松之丞  一覧へ


チラシ

「天明白浪伝」全10話を3日間かけて通しで読み上げる。演者は神田松之丞と神田阿久鯉の姉弟コンビである。

昨年の「畔倉重四郎」「村井長庵」で連続読みの面白さに目覚めてしまった。

講談は連続読みに限る。1日だけの公演では長い話の一話だけを舞台にかける。その話は全体の中の一番面白い部分であることが多い。連続読みでは話の発端から始まり、一見関係のない話に飛び、多くの登場人物が出て最後に全ての話が繋がって大団円となる。大河ドラマを見るようである。

演目1

初日のトークは阿久鯉、松之丞の姉弟コンビに読売新聞の長井好弘先生を加えての鼎談だ。天明白浪伝というのはどういう話かを雑談で紹介してくれた。

第一話「徳次郎の生い立ち」は地味だが大切な話だ。稀代の大泥棒、神道徳次郎がどのようにして泥棒に目覚めたかがここで語られる。

第二話「稲葉小僧」は色浅黒く苦み走ったいい男、稲葉小僧新助が大店の奥方と吉原の花魁の二人の女にしてやられるという女難の話。奥方が寝ている間にそっと忍び込む新吉、吉原の屋根伝いに逃げる新吉の周りは江戸の闇。闇の深さを表現するために松之丞は客席の照明を暗くして語り始める。

第三話「金棒お鉄」。阿久鯉姉さんの登場である。稀代の因業婆アお鉄を本人がなり変わったように威勢良く語る。

演目2

第四話「むささびの三次」は稲葉小僧が再登場する。地味に正直者の夫に飽き足らない女房がむささびの三次の住みかに入り浸っている。それを知った夫は…、という話。

第五話「むささびの三次召し捕り」では夫を殺した三次が女郎屋に上がる。女郎屋を経営するのが金棒お鉄だからタダで済むはずがない。三次は捕まって獄門になる。

第六話「悪鬼の萬造」では大親分になった神道徳次郎が登場する。徳次郎に諭され堅気になった半助と萬造の話。堅気の生活に飽き足らない萬造は博打に手を出してしまう。

第七話「首なし事件」は徳次郎と新助が首の無い死体の謎を解き明かす。ミステリー仕立ての話。

演目3

第八話「八百蔵吉五郎」は打って変わって吉五郎とお花の純愛ドラマとなる。最後のトークで阿久鯉姉さんが明かすがこの話を台本通りに語ったのは2割で、残り8割は松之丞の創作だったらしい。得々と女性の手の握り方を話していたのは実は自分の体験だったとは。

第九話「岐阜の間違い」は徳次郎と新助の話。変装して上方へ旅に出たふたりは岐阜の茶屋で災難にあった老人と娘を助ける。義賊としての徳次郎を語る。

第十話「大詰め勢揃い」は阿久鯉姉さんが締める。今まで登場した泥棒、初めて登場する泥棒が勢ぞろいする。明るく派手な阿久鯉姉さんの語りで最後に全員が獄門になっておしまい。連続読みは最後は意外にあっさりしている。次の回まで引っ張る必要がなくなったからだろう。

あいさつ

講談の連続読みを聴くのは3回目だ。次から次へと登場するクセのある人物たち、奇想天外な筋、次回へと誘う絶妙な語り口。単発のものよりずっと面白い。最後まで聴くと全部聴いたという達成感が心地よい。

次は松之丞と阿久鯉姉さんの俥読みで「畔倉重四郎」をやるという。楽しみである。


 

(演目)
     《天明白浪伝連続読み》----- 神田松之丞、神田阿久鯉
・イントロダクション〜トーク(松之丞、阿久鯉、長井好弘) 
第一話 徳次郎の生い立ち(松)第六話 悪鬼の萬造(松)
第二話 稲葉小僧(松)第七話 首なし事件(阿)
第三話 金棒お鉄(阿)第八話 八百蔵吉五郎(松)
第四話 むささびの三次(松)第九話 岐阜の間違い(松)
第五話 むささびの三次召し捕り(阿)   第十話 大詰め勢揃い(阿)

                   
(時・場所)
 ・2017年5月7日(月)〜9日(水)
 ・19:00〜21:00
 ・深川江戸資料館・小劇場


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