ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は坪井夏美のヴァイオリン・ソロで始まった。初めは固かったヴァイオリンの音が楽章が進むにつれ躍動的で大胆になって行くのが感じられた。
第四楽章のカデンツァではそれが頂点に達した。ここで彼女の大胆で情熱的なヴァイオリンが全開になった。
数十年前日本で頂点のヴァイオリン・ソロを聴いた。ベルリン・フィルの第一ヴァイオリンを勤めていた海野義雄の演奏を東京文化会館大ホールで聴いた。あのデモーニッシュなヴァイオリンの音を忘れることはできない。はじめの一音からして違うのだ。
25才の坪井夏美がこれからどのように大きくなって行くか楽しみである。
彼女のアンコールはバッハの「サラバンド」。重々しくそして軽やかにバッハを演奏した。
ブラームスの交響曲第2番はあまり演奏されることはない。第一楽章と最終楽章の一部のメロディを聴いたことがある程度である。
あまり演奏機会のない曲を28才の指揮者粟辻聡は情熱的に指揮した。第2番の交響曲ももっと演奏されてもいいのではないかと思った。
アンコールはブラームスの「ハンガリー舞曲第4番」。粟辻は踊るような身振りで陽気に指揮した。
|