「雲一里」とは雲助、一朝、小里んのことだ。チラシのデザインも洒落ている。定期的に三人で会をやっているようだ。
小多けは前座噺で「二人旅」。上手い人がやると面白いのだが前座がやると大抵はつまらない。
一蔵は「のめる」。言葉遊びみたいな話で前座噺か。一蔵はまだ二つ目とは思えないほどうまい。緩急を自在に操って面白かった。
一朝は前半のトリ「三井の大黒」。左甚五郎の名人噺。上方の大工甚五郎が江戸に出てきて江戸の大工と競い合うという噺。
はんなりとした上方言葉と江戸弁の使い分けにメリハリがあってやり取りを聴いているだけで楽しい。歯切れのいい一朝にぴったりの噺だった。
小里んの「言訳座頭」。季節柄大晦日の噺。トリの雲助にエールを送る噺である。
江戸時代は代金の支払いは掛けといってその場ではせず、月末にまとめて支払ったものらしい。払えないときは翌月に回す。大晦日になると待ってはもらえない。気の弱い者は言い訳もままならない。そこで言い訳の得意な近所の座頭、あんまさんに頼む。
小里んの座頭は柄にあっていて存在感があった。
トリは雲助の「芝浜」。年末はこの噺を聴かないと物足らない。雲助はたっぷりとこの人情噺の名作を語った。観客もこれを聴いて今年の聴き納めとしたのかもしれない。
「雲一里」はいずれも60台後半、脂の乗り切った師匠たちである。この年代の落語家たちが頑張っていると後に続く一之輔たち若手が負けじと頑張ってくれる。落語界は当分安泰ではないか。
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