西武池袋線清瀬駅近くの清瀬けやきホールの中に畳敷きの会議室がある。今日の落語会の会場である。畳敷きだから靴を脱いで上がる。それだけで何かアットホームな気がする。
初めは立川笑二で「子ほめ」。前座噺である。笑二は淡々とこの手垢のついた前座噺をする。笑二は声の質が聴いていて疲れない。いるだけで独特のおかしみがあり淡々としゃべっているが先が聴きたくなる。
次は柳亭小痴楽、初めて聴く落語家である。噺は「宿屋の仇討ち」。旅の途中ある宿屋に泊まったが隣の部屋がうるさくて眠れない。旅の侍が採った方策は?
小痴楽は旅の侍、隣の部屋に泊まった三人組、宿屋の番頭の三者三様をスピーディに演じ分ける。思ったより動作が大きくオーバーアクション気味だ。中の良い三人組が酒を飲んで歌ったり踊ったりしまいには布団の上で相撲を取ったりする。かたやその騒ぎに苦々しげな浪人者。二組の泊り客の間に挟まっててんてこ舞いする番頭。小痴楽は通常の2倍くらいのスピードで各グループを演じ分ける。めまぐるしいが小気味好い。
仲入り後はふたたび小痴楽で「粗忽長屋」。行き倒れの死体を抱いた熊さん、こいつは俺だ。して見るとこいつを抱いている俺は誰だ?「頭池」と並ぶ不条理落語の代表である。小痴楽はスピード感たっぷりに演じる。
トリは笑二の「大工調べ」。店賃の代わりに大工道具を差し押さえられた与太郎。大きい仕事が入ったので道具を受けだしに行くが…。
小痴楽の早口の後で聴くと笑二の口調はまったりして安心感がある。
与太郎に代わって大家に掛け合いに行った棟梁は散々嫌味を言われついにキレる。キレたときの棟梁のセリフがこの噺の見せ場になる。今までまったりとやっていた笑二はここぞとばかり江戸っ子の啖呵をきる。観客は胸がスッとしたところでお開きになる、という寸法である。
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