立川志らく独演会  一覧へ


入口

会場は練馬文化センター小ホール。初めて来たが、実にいい場所にある。練馬駅の真ん前だ。デッキをまっすぐ進んでそのまま降りてくれば文化センターの入口である。

文化センターの周りは公園になっていて秋の虫が鳴いている。駅の真ん前に商業施設を置かないというのは行政のひとつの考え方であろう。駅を降りると緑があり、虫が鳴いている。こういうところに住みたい人が多いのではないか。

今日の演者立川志らくは西武池袋線練馬の準急で一つ先の石神井公園に住んでいる。師匠談志の元自宅を買い取ったものである。ちなみに談志は普段は新宿のマンションで生活していたようだが。

前座は北海道の元保母さん、志ら鈴。3年前、内幸町ホールで聴いた時より格段に上手くなっていた。声がメリハリのある、落語を話すための声になっていた。500人満員の会場で15分間話すことのできる前座さんは幸せである。二つ目になったら自前で観客を集めなければならないし、500人は並大抵のことでは集まらない。

志らくの一つ目の噺は名作「火焔太鼓」。志らくのリズム感、スピード感が生きる噺である。ダメな亭主としっかり者の女房との掛け合いが見事であった。

古い太鼓を買わさせた亭主が「タンスを買って来た」と言った時、観客から失笑と拍手がわいた。いつも完璧な志らくでも油断することがあるんだろう。見逃さない観客もレベルが高かった。

トリはまくらなしで「中村仲蔵」。浪人の子に生まれた仲蔵が大部屋から始めて一代で大名跡となるという立身出世ものである。志らくが好んでかける演目のひとつだ。ついこの前神田松之丞で聴いたばかりだったので講談と落語の違いを比較する意味で面白かった。

志らくは仲蔵の前歴をじっくり語った。

仲蔵 演目

舞台の工夫が元で成田屋市川團十郎にみとめられ、それが元で演出家の金井三笑に疎んじられる。普通はダレ場になるので省かれるところを独特のリズムで流れるように語るのは志らくの芸である。

新進気鋭の仲蔵がなぜ弁当幕と言われる五段目の斧定九郎を割り当てられたか。金井三笑のイジメだったのだ。

自殺未遂をするほどのイジメを跳ね返すために仲蔵が取った手段は…。というのがこの噺の主題である。

折れる寸前まで引き絞ったバネほど反発力が強い。志らくは団十郎の口を借りて言う。「仲蔵の工夫は歌舞伎が演じられる限り、これから数10年、いや数100年経ってもすたれることはないだろう」

公園

1766年中村座で演じられた仲蔵考案の型は2017年現在も歌舞伎座で演じられている。


 
(演目)
   ・十徳 ----- 立川志ら鈴
   ・火焔太鼓 ----- 立川志らく
   ・仲入り  
   ・中村仲蔵 ----- 立川志らく
                   
(時・場所)
 ・2017年10月7日(土)
 ・19:30〜21:30
 ・練馬文化センター・小ホール


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