渡辺貞夫/山下洋輔  一覧へ


パンフレット

今年のメインエベントは蝉の鳴き声をバックにまだ明るい午後5時30分から始まった。

何気なく出てきたのは山下洋輔トリオ。レギュラーのトリオではない。ピアノ ; 山下、ドラムス ; 本田珠也、ベース ; 坂井紅介という特別編成のトリオだ。ゲストにテナーサキソフォンの菊地成孔、アルトサキソフォンの寺久保エレナという5人編成のユニット。寺久保エレナはおとといニューヨークから帰国したばかりだという。初めて聞くミュージシャンだ。豪快な音色のアルトサックスを吹く。

天気予報では雨だったが空は快晴、蝉時雨(せみしぐれ)の音がほどの良いバックグラウンドミュージックになっている。時々涼しい風が吹き、夏の野外音楽堂らしい心地良さだ。

山下ユニットは快調に飛ばして1時間後に退場し、休憩に入る。

日比谷野外音楽堂

休憩が終わると周りは薄暗くなり、蝉の声も徐々に穏やかになってきた。
渡辺貞夫グループの登場だ。いくつになったんだろう、相変わらず若々しい。

アルトサックスを吹き始めたらその音に驚いた。アルトサックスってこんないい音がするのか。そういえば渡辺貞夫の生演奏を聞くのは今日が初めてだ。あまりのすばらしさにうっとりしてしまった。

ユニットはアルトサキソフォン ; 渡辺貞夫、ピアノ&キーボード ; 塩谷哲、ギター ; 養父貴、ドラムス ; 本田珠也、ベース ; コモブチ キイチロウ、パーカッション ; ンジャゼ・ニャンという編成だ。音楽は渡辺得意のアフリカ音楽をベースにしたフュージョン。皆が一流ミュージシャンだから音に厚みがあり、聞いていて心地良い。

日比谷野外音楽堂

このまま最後まで行くかと思ったら一陣の風とともに雨がパラパラ降り始めた。やはり予報どおりかと私も含めほとんどの観客がカッパを着始めた。

予想外だったのはこの後だ。雨がだんだん凄くなってきて、雷も鳴り始めた。舞台の前のほうが濡れてきたので、スタッフが楽器やモニタースピーカーにビニールを掛ける。観客もカッパでは間に合わなくなってきたので後ろのほうへ避難し始める。大変なことになってきた。

日比谷野外音楽堂

そのうちに隣のビルの避雷針にカミナリが落ちて凄い音がした。渡辺貞夫はかまわず吹いている。数十秒後、PAが停止し音が出なくなった。ここにきて始めて演奏は止まり、舞台上のスタッフの数が増えてきた。ブレーカーか何かが落ちただけだったのだろう。数十秒後に演奏が再開した。
こんな状態では渡辺貞夫が危ないんじゃないかと思った。何しろ金属のかたまりを手に持って口で吹いているのだから。

1時間後、演奏は終わった。

本来ならここで15分間の休憩が入り、最後のプログラム、渡辺貞夫Gプラス山下洋輔Gの演奏をする予定だったと思う。

日比谷野外音楽堂

渡辺貞夫本人のMCで「悪天候のためあと1曲で終わらせてもらいます」と言い、舞台上に山下洋輔とそのグループを呼んだ。
最後の曲はチャーリー・パーカーの曲だったと思う。全員で演奏し、嵐の中のコンサートは終わった。

こういうことがあるとコンサートはホールのほうが良いのかとも考えるが、蝉時雨の中、涼風に身をまかせながら聴いたジャズは何物にも換えがたいと思ったのも確かである。

(演目)
・山下洋輔グループ
・渡辺貞夫グループ
・渡辺貞夫G&山下洋輔G

(時・場所)
・2013年7月27日(土)
・17:30〜20:00
・日比谷野外音楽堂


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