午後1時半開演というのは亀有駅前でお昼を食べてくるとちょうどいい時間ですよ、という主催者の考えであろう。そのようにした。
リリオホールは定員650名、客席の傾斜が急で舞台が見やすいホールである。
チラシには載っていない馬久が開口一番であった。馬久は二つ目なので前座ではない。演目は「近日息子」。父親と息子の掛け合いものだが、息子が頭が弱く珍問答になる。馬久は表情豊かにそつなく語ったが父親と息子の性格を演じきれていない。父親が具合が悪いというと医者から坊さんまで呼んでしまうという早合点の滑稽さが伝わらなかった。
兼好は長いまくらから「だくだく」をやった。泥棒ものをやろうとは決めていたがどの泥棒ものをやるか直前まで迷っていたのではないだろうか。壁に描いた財産を盗むという滑稽な泥棒を兼好は見事に演じた。泥棒の所作を流れるようにリズミカルに表現し視覚と聴覚の両面から観客を楽しませてくれた。
トリをとると思われた一之輔が仲入り前に登場した。やったのは新作の「代書屋」。気難しい代書屋のオヤジと履歴書を頼みに来た頭の弱い男との掛け合いを独特のメリハリのあるセリフまわしで表現し、おかしかった。
仲入り後は百栄で「桃太郎後日譚」という新作。皮肉屋あるいはひねくれ者というキャラクターの百栄がどんな噺をするのか、今日一番期待していた。残念ながらまくらも噺もストレートでおもしろみがなかった。客が期待する百栄像を本人が自覚していないのではないか。
トリは白酒の「青菜」。植木屋と旦那の優雅な掛け合いが後半植木屋と近所の八五郎とのおかしな掛け合いになる。以前小三治で聴いた噺だ。小三治と比べたら荒削りだが、たたみ掛けるような後半の勢いは迫力があった。
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