地下鉄東西線神楽坂の駅を出てすぐのところに赤城神社がある。
境内にはうっそうとした木が生えていて古くからある神社だろうなと思わせる。
建物はコンクリートでできていて要塞のようだ。隣にカフェがあり、地下にホールがある。
今日の舞台は地下のホールで催される「三遊亭萬橘独演会」である。
120人ほどの会場はほぼ満席である。
最初に登場したのは前座の三遊亭まん坊でおなじみの前座噺「寿限無」。この噺は前座がやると面白くない。
「寿限無寿限無五劫の擦り切れ…」の繰り返しが鼻についてくる。長い名前を連呼するだけで面白がるほど今の客はウブではない。
面白くするにはかなりの構成力演技力が要求される。前座噺ということになっているが実は真打クラスの実力がないと客を笑わせることはできない。
まん坊はこの単純な噺を特に工夫することもなく淡々と演じた。面白くなかった。
萬橘はこの会場に来るまでの電車の様子をまくらに噺に入った。帰宅ラッシュが始まったばかりの千代田線東西線の混雑ぶりはすごい。
今日来てくれたお客様はこういう状況を乗り越えて来てくれたんだなと思うと、「ほかに行くところはなかったんですかね」という噺家の慣用句はとても言えない、と言った。一見がらっぱちだが誠実な人だ。
長いまくらから入った今日の本題は「お化け長屋」。長屋の空いているへやを自分の持ち物のように人に貸してやろうと画策する古狸の杢兵衛が主人公。
この部屋では以前人殺しがあって…、と借りに来た人を脅して楽しんでいると次に借りに来た人は…。という話。人を脅かすときの萬橘の表情がおかしい。
仲入り後は「佃祭り」、夏の噺で今の時期にふさわしい。3年前身投げを助けた小間物屋・次郎兵衛は佃祭りの帰り、仕舞い船に乗る寸前に女性に話しかけられ、乗り損なってしまう。
その仕舞い船が転覆したことから騒動は始まる。話しかけた女性は3年前身投げを助けられた女性で改めて礼を言うために引き留めた。引き留められた次郎兵衛はおかげで一命を救われることになった。
この話を聞いた与太郎は…、ということからさげになだれ込んでいく。佃祭り、川船、季節感あふれる噺だ。
テンポのいい口調で語られる「佃祭り」はいかにも祭りの浮き浮きした気分がでていた。
来たときは嵐のような天気だったが、地上に出ると雨風は止んで、すがすがしい空気になっていた。
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