「アルルの女」の有名なフレーズが流れた時「おっ」と思った。音に厚みがある。それが迫力になっている。以前チェコ・フィルとかレニングラード交響楽団とかボストン・フィルとか海外の有名なオーケストラを聴いた感じに似ている。N響は上手いな、と思った。
次はモーツァルトの「交響曲第35番」。「アルルの女」で舞台いっぱいに展開した楽団員の半分が袖に退場した。指揮台も撤去された。それでも井上道義が指揮棒を振るやいなや厚みのある音が観客を圧倒する。このオーケストラはうまい。
モーツァルトでは編成も小さく軽い音でバックグランドミュージックのように演奏するイメージがあった。これはヘビーな音で観客に居住まいを正させる。
休憩の後は期待の新星21才のピアニスト小林愛実が登場した。曲はモーツァルトの「ピアノ協奏曲第23番」だ。協奏曲はオーケストラとソリストの戦いといわれる。この重量級のオーケストラに対抗するにはかなりパワーが必要だ。残念ながらこのピアニストでは勝負にならなかった。
最後は「アルルの女組曲第2番」。いきなりスラブ風のど迫力のフレーズに圧倒された。ビゼーの「アルルの女」はこれほど迫力のある曲だったのか。
指揮者の井上道義は1946年生まれ、71才。贅肉の無い体、鋭い反射神経。ウィットに富んだMC。一流の指揮者だ。 指揮者はこうでなければならない。
|