評判のシブラクである。映画館ユーロスペースを間借りして営業している。200人弱の小さい映画館だが椅子は新しい。ゆったり配置されている。
仲入り無しで4人登場し、ひとり30分という決まりである。前座の噺もない。すっきりしている。
まずは台所おさんの「出来心」。名前も変わっているが独特の風貌である。江戸時代からタイムマシンでやってきたような顔である。間抜けな泥棒にぴったりの表情が地なのか演技なのかわからない。別の噺でもう一度見て見たい。
いつも通りダルそうに登場した松之丞は今回はまくらが少ない。ベテランの講談師はまくら無しで話を読み始めるというまくらから剣豪の話に入っていった。
「寛永宮本武蔵伝より 吉岡治太夫」。武蔵と戦った吉岡清十郎の何代か前の話である。この吉岡は立派な剣豪である。
はじめはゆったりと読んでいた松之丞は道場での他流試合にかかる頃から張り扇の音も高らかになだれこむように激しく読み始めた。流れる汗も拭かず一瀉千里の勢いだ。
2分間の休憩の後出てきたのは立川吉笑。初めて聴く噺で「桜の男の子」。話が進むにつれてわけがわからなくなるという「頭山」みたいな噺である。最後まで話してもよくわからず、考えオチならず考えてもよくわからないオチであった。本人はもっとキレをよく決めたいと思っているのだろうが…。
トリは春風亭柳朝の「紺屋高尾」。これまた変わった表情の落語家である。古典落語の名作をどう演じるのか興味があった。どうも本人がこうやりたいと思っているようには決まっていないのではと思った。人情噺はひねらず正攻法でやるしかないのではないか。本人はもっとキレをよく決めたいと思っているのだろうが…。
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