粋歌の新作コレクション  一覧へ


チラシ

前座の春風亭きいちは前置きもなくいきなり「芋俵」に入った。どんな名前の前座さんなんだろうと紙とボールペンを構えていたのが肩透かしになった。前座はめくりがないのだから自己紹介するしか名前を覚えてもらう手段はない。達者な話しぶりだったのに残念だった。

粋歌のはじめは「すぶや」。「すぶや」とは渋谷のこと。今でも地方から東京へ出て生活するのは大変なことなんだろう。地方の子女が東京へ出るチャンスのはじめは高校を卒業して大学入学か就職だろう。その不安と期待を粋歌はオチも含めて見事に描写する。

粋歌の次は「初めての確定申告」。確定申告にやってきた手のかかりそうなおばさん。粋歌扮する税務署員は手取り足取り指導する。申告書ができていくうちに何か変なことに気づく。あれ、このおばさん…。話は奇想天外な方向にずれていく。

仲入り前はゲストの春風亭一之輔だ。噺は「千早振る」。こういう時にはぴったりの滑稽噺だ。大工の八五郎が娘のかるたの意味を聞きにくる。普通は好々爺のご隠居さんかせ相手をするのだが、一之輔の隠居は一風変わっている。観客はいきなり一之輔ワールドに引きずり込まれる。オチまではジェットコースターに乗ったよう。ぼーっと一之輔の世界を眺めていればいい。

トリは粋歌が昨年渋ラクで創作大賞を受賞した作品、「プロフェッショナル」。意識が高い系若者が製パン会社に就職する。唐揚げパンを作る工場で研修を受ける。こういうことをするために会社に入ったのではない、と思いながら調理パンを作る若者。それを冷ややかに見ているパートのおばちゃんたち。

水と油の若者とおばちゃんとの間に接点が生まれた時、若者は気づく。…。

演目

クライマックで流れる音楽はNHKの「プロフェッショナル」のテーマソング。粋歌は物語を作るのがうまい。普段は見過ごしてしまうことを切り取って目の前に突きつけられると改めてそのことの本質がわかる。

昨年は「人間活動」のため休んでいたが今年から活動を再開する。「人間活動」とは出産と育児。楽屋から一才に満たない女の子がお母さんの舞台を見ている。


 

(演目)
   ・芋俵-----春風亭きいち
   ・すぶや-----三遊亭粋歌
   ・初めての確定申告-----三遊亭粋歌
   ・千早振る-----春風亭一之輔
   ・仲入り
   ・プロフェッショナル-----三遊亭粋歌

                   
(時・場所)
   ・2017年2月14日(火)
   ・19:00〜21:15
   ・内幸町ホール






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