【Tの感想】
千穐楽。満席。演劇好きの若い客もたくさんいた。
面白い舞台構成だった。
太福さんと脚本・演出家の方が、舞台横で観劇しながら、場面転換の時などにコメンテーターのように話す。
俳優は木馬亭の席の間や舞台横を所狭しと駆け回りながら演技する。
真横で演技されることもあり、非常に臨場感があった。
内容は小学生〜現在までの太福さんの人生を描いたもの。
言葉数は少ないがいつも背中を押してくれる父。優しく見守る母と姉。
大学を卒業したらなんでも好きなことをしていいという風に育てられたという。
小学生の頃から放送作家になりたかった太福さんは、念願叶ってコントの放送作家になるも、行き詰まりを感じていた。その時に業界の人にたまたま教えられた浪曲にハマり、すぐに福太郎師匠に弟子入り。
師匠と過ごしたのはたった2か月と18日。
その後も浪曲界の師匠や先輩に支えられ今日に至る。
随所に名言がちりばめられていた。
太福さんのお人柄なのだろう、どんな苦境に立たされても必ず誰かが助けてくれる。
俳優の方々も迫真の演技であった。本当に本人に見えてくるようだった。
福太郎師匠が亡くなった夜、みね子師匠が一言、「私が三味線でいいかしら?」と太福さんに告げる。
みね子師匠はその時のことを覚えていらっしゃらないという。極限の精神状態であるにも関わらず、何かこの新しく入ったばかりの子に言ってあげなくては、という心遣いであったのだろう。
太福さんはその時のことを鮮明に覚えているという。
涙ばかりの劇ではなく、太福さんが放送作家兼芸人時代に作成したコントを俳優の方が再現したりと笑いも多くあった。
太福さんの人生から学んだことは、感謝すること・何事も好きだという気持ちを大切にすること。
この二つがあれば太福さんのような気持のいい人間になれるのではないか。
誰に対しても感謝。言いたいことははっきり言う。自分が好きだと思った人やモノに関して、とことん向き合う。
そして一番大事なのは笑いだ。太福さんはよく笑う。笑うこと、笑わせることが根っから好きなのだろう。
太福さんが笑うとなんでもどうでもよくなる。笑っちゃえばいいや!となる。
劇中1か所だけ、そんな太福さんが号泣する場面がある。奥さんの前で。堰を切ったようにワッと泣く。
「人は死ぬ。形あるものは必ずなくなる。それはわかってる。でも…やっぱり…」
今までずっと我慢してきたことがすべて溢れ出る。
ぐっと支える奥さん。「私は自分がつらい時あなたにそばにいてほしくて一緒になったんです。だから、あなたがつらい時は絶対そばにいます。だから無理しないで。大丈夫だから」
二人のきずなが眩しかった。
本当は千穐楽、奥さんは観に来る予定だったらしい、しかし、最愛の娘さん(2歳)がお熱のため来られなかった。
この娘さんが大きくなった時、ぜひこの劇のDVDを観てほしい、と赤の他人であるが思ってしまう。
トリは太福さんの浪曲。福太郎師匠が好きであった滑稽話。どこまでも間抜けな子悪党の話。
題名がわからないのがすごく残念。これから調べまくるので、とりあえず感想はここまで。
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