立川談笑一門会  一覧へ


演題

笑坊の「時そば」は上方の「時うどん」であった。笑坊は関西出身だったのだ。そういえば一番弟子の吉笑も関西出身だ。

「時うどん」は二人で15文しか持っていない。うどんを食うためにはごまかさざるを得ない、というところが「時そば」と違う。関西風に二人で掛け合いをしながら一杯のうどんを食う。初めて聴いたが新鮮だった。

次は談笑の「初天神」、どちらかといえば前座話に近い軽い噺である。こういう噺を談笑がやるとやけにおかしくなる。親父は普通のおやじだが子供の表情が実に豊かな「初天神」になった。途中子供のセリフが脱線したり、オチを言った後も終わらず変形「PPAP」をやり始めたり、とハチャメチャになるのも談笑らしかった。

中入り後は吉笑の「蔵替え」。プログラムでは「片棒・改」となっていて途中までやり始めたのだがおかま風の長男がうまくいかないスキル不足です、と言いながら別の噺に滑り込んで行ったのには唖然とした。あまりに自然だったので予定の切り替えかと思ったほどだ。

「蔵替え」は三つの大店がひと月ごとに蔵の中身を取り替えるという変な話である。さらに他の三つの大店が三ヶ月ごとに蔵の上段に入っている品物を取り替え、さらには…、という筒井康隆もびっくりしそうな噺である。よくこんなことを考え出すものだ。

トリは笑二の「鼠穴」。先月のこの回で笑二のうまいのは承知していたから今回の大作「鼠穴」には期待が大きかった。

落ちぶれた弟と大店の主人に成り上がった兄とのやりとり、弟の深層心理を表したような恐ろしい夢。有能で実直な番頭。微妙な表現力を要求される噺を若干26才の笑二がどうやるのか。

挨拶

結果は期待以上に見事なものだった。
2007年の年の暮れ、よみうりホールで行われた立川談志の独演会に「落語の神様が降りてきた」、と志らくが自分の独演会で話していた。
2016年12月25日の武蔵野公会堂にも落語の神様がいたのではないか。この複雑な心理劇を語って200人余りの老若男女を釘付けにするには26才の若者の力だけでは無理ではないかと思うからだ。


 
 
(演目)
   ・時そば-----立川笑坊
   ・初天神-----立川談笑
   ・仲入り
   ・蔵替え-----立川吉笑
   ・鼠穴-----立川笑二

                       
(時・場所)
   ・2016年12月25日(日)
   ・19:00〜21:20
   ・武蔵野公会堂


<厩火事.com>
Copyright(C) 2012 Umayakaji.com ALL rights reserved.