開口一番は清野茂樹アナウンサーの実感中継あの1983年6月2日に蔵前国技館で行われたアントニオ猪木対ハルク・ホーガンのIWGP選手権決勝の試合、世に言う「猪木舌出し失神事件」である。
神田松之丞の講談「山田真龍軒」は宮本武蔵伝の中でも短い話なのだろう。持ち時間が少ない時に松之丞がやる話だ。
夢枕獏と大槻ケンヂのトークはプロレスという興行が色々な面で深い解釈ができることをわからせてくれた。冒頭の「舌出し事件」にも触れたが、思いもよらなかった解釈もあるんだと驚かされた。
休憩後は再び清野茂樹アナウンサーが登場して、ミスター高橋の暴露本「流血の魔術 最強の演技 すべてのプロレスはショーである」がいかにプロレスファンにダメージを与えたかについて述べた。
トリは今日のおめあて神田松之丞の「グレーゾーン」だ。
冒頭松之丞は改まった口調でこの話は今日の公演をもって封印すると述べた。理由は重要な登場人物が今年故人になった。反論のできない故人を陥れることはしたくない、というものだ。
主な登場人物は大乃国、千代の富士、そして瀧川鯉八だ。
この三人の織りなす人間模様は深く重い。今までの出し物が全てこの話の前説だったことを知った。
プロレス八百長論がいかに無意味な議論であったのか、人生は裏もあれば表もある。白でなければ黒という単純な解釈では割り切れない。いわゆる「グレーゾーン」である。
話し終えた松之丞はしばらくの間演台に突っ伏して立ち上がらなかった。「グレーゾーン」という深遠な話に引導を渡していたのだろう。
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