神田松之丞独演会  一覧へ


神田松之丞

講談の独演会で前座が落語とは…。もっとも講談界では松之丞が一番年下だから彼の前座を先輩の講談師はやりにくいかもしれない。講談界に突然出てきて旋風を巻き起こした彼独特の現象かもしれない。

二つ目という真打に上がる前のいわば修行中の者がこんなに活躍している時代は今までになかった。スポーツ界では黄金の何年代とかいうことがよく言われる。超一流の選手がある年に多く生まれるという現象だ。

特筆すべきはその中に講談界または浪曲界が入っていることだ。落語は何回かブームになっているが講談とか浪曲がこんなにもてはやされた時代は今までなかった。

どの世界でもスターがいると盛んになる。サッカーしかり野球しかり相撲しかり、…。スターの存在は大きい。

演目

演芸会では講談界の神田松之丞、浪曲界の玉川太福、落語会の立川吉笑から目が離せない。

今日の独演会は早い時期からチケットは完売だ。客層は若い。特に若い女性が多い。少し前なら女性が講談の会に来るとは考えられなかったものだが。

松之丞は30分を超える長いまくらから慶安太平記の第7話「宇都谷峠」を語る。ちなみにこのまくらが面白い。彼の人気のひとつの要素はまくらの面白さにあるのかもしれない。下手な落語家が羨ましがるほど笑いが来る。そのあとの迫力ある講談との落差が彼の特長だ。

1時間を超える「宇都谷峠」のあと仲入り。仲入り後は慶安太平記の第8話「箱根の惨劇」。この二つの話はセットになっている。あるお坊さんが2千両という金を5日間で京都に届け、5日間で江戸に帰ってくる。行き帰りに起こったことを語る。映画でいえばロードムービーである。開口一番に「二人旅」を配したのも松之丞の考えである。

全19話に及ぶ由井正雪の陰謀を描いた「慶安太平記」。その中の一部を語っただけで正雪は脇役で少し出てくるだけの展開なのだが、手に汗を握るほど面白い。「語りの芸」といえばそれまでだが、人が人に語り聞かせる、ということが人のDNAに組み込まれているのではないだろうか。縄文時代の雨の日、洞穴の中で語り部が何やら話している。その前には大勢のものたちが一心に耳を傾けている、…。



(演目)

  • 二人旅-----------------------柳家小かじ
  • 慶安太平記〜宇都谷峠------神田松之丞
  • 仲入り
  • 慶安太平記〜箱根の惨劇---神田松之丞

(時・場所)

  • 2016年9月20日(火)
  • 19:00〜21:20
  • 東京芸術劇場・シアターウエスト


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