前から三番目のほぼ真ん中あたりの席。
会場はジャズのスモール・コンボを聴くのにちょうど良い広さ。
前半"メモリー"まではピアノトリオの演奏。生のピアノの音が耳に心地よい。秋吉敏子のピアノの音はほんとに耳に自然に入ってくる。前半の聴き所はバド・パウエル譲りの"テンパス・フュージット"だろう。ビー・バップの代表的なアップテンポの曲。サイドの二人は秋吉の手元を覗き込みながら緊張気味に演奏していた。 これだけで元が取れたと思ったほどすばらしい演奏だった。
後半はルー・タバキンが加わったカルテットの演奏。"墨絵"と "孤軍"でのルーのフルートは名人芸。
昔から彼のフルートは定評があったのだが、ますます磨きがかかったようだ。
今回のプログラムの中で前半最初の"ロング・イエロー・ロード"と後半最初の"木更津甚句"は日本の古い曲をジャズにアレンジしたものだが、アレンジが見事なので漫然と聞いていただけでは日本の曲とはわからないほどだ。あらためて秋吉の編曲の才能を感じた。 ちなみに"ロング・イエロー・ロード"の原曲は"ななつのこ"の"かーらーすー何故鳴"の部分までだ。"何故鳴"で止めたところが彼女のセンスだろう。
今年82才。ますます磨きがかかってとどまることを知らない。
|