柳家小三治独演会  一覧へ


今年初めての小三治。元気だった。今日の小三治はいつになく体調が良かったのではないか。

"青菜"を聞くのは確か三回目、毎回同じというわけではない噺を聞くのも落語を聴く楽しみの一つだ。
今回の"青菜"はお屋敷での旦那との会話を主体にしてつくっていた。下層階級の者がふとしたきっかけで上流階級に触れ、何につけても感心するという噺だ。これは下層階級でなくても良い。新入社員が先輩社員のやること言うことに感心するのと同じだ。異文化交流の噺だ。

植木屋が何かというと「お屋敷ですね〜」と感心する。この「お屋敷ですね〜」という言葉に小三治は異文化に触れた者のさまざまな感情を表現する。ある時は"感心"、ある時は"あこがれ"、ある時は"自己卑下"というような。

"お屋敷"の縁側で旦那が柳蔭(やなぎかげ)という酒をご馳走してくれる。ひと仕事の後、木陰から涼しい風が吹いてくる。汗が引きかけたところに甘口の冷たい酒、小三治のしぐさからさぞうまいんだろうと思う。
実はこれは直しというもので、辞書にはこう書いてある。「調味料でもある甘味の強いみりんに焼酎を加えて甘味を抑え、飲みやすくしたもの。」直しという名前なら植木屋も知っていたし、植木屋の女房も知っていた。庶民の飲み物だったんだろう。だが、植木屋はこれは関西から取り寄せた柳蔭というもので…と説明されると、「お屋敷ですね〜」と感心する。

いろいろなものをご馳走になってすっかり良い気持ちになった植木屋が長屋に帰ってくる。そこから"青菜"の第二部、ドタバタ編が始まる。"お屋敷"での上品な会話と長屋でのがさつな会話の対比。そこがこの噺の面白いところだ。
小三治はさらっとやってしまうが、他の落語家ではなかなか的確に表現するのは難しいのではないか。両方の立場に通じていないと観客に納得させることができないと思う。少しでもわざとらしさがあると観客は笑わない。

"小言念佛"はまくらから絶妙に入った。

オリンピック緒戦のなでしこJAPANの活躍から、先日世界選手権で優勝したソフトボール女子チームのメディアでの取上げられ方のあまりの違いを怒りながら"念仏"に入っていった。最後まで怒っているような"念仏"だった。小三治絶好調! と声をかけたい気分だった。

三之助の"かぼちゃや"は柄に合っていて良い出来だった。

習志野文化ホール(行き) 習志野文化ホール(入口) 習志野文化ホール(舞台) 習志野文化ホール(帰り)

(演目)
・かぼちゃや----柳家三之助
・青菜----------柳家小三治
・小言念佛------柳家小三治

(時・場所)
・2012年7月26日(金)
・18:30〜20:45
・習志野文化ホール


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