鳥文斎栄之の絵は外国の美術館に点在していて、それらをまとめて見る機会はめったに無い。今回はボストン美術館と大英博物館および国内に点在している作品を集めた貴重な展覧会である。
鳥文斎栄之は旗本の長男に生まれた。徳川家治の御納戸役を勤めたのち33才で隠居し、73才で亡くなるまで浮世絵師として活躍した。 お役目を果たしたのち隠居し、自分の好きな道にすすむというやり方は伊能忠敬に通じるものがある。士農工商という身分制度が明確に存在した時代である。その生き方は現代人も見習わなければならない。
彼の作品はいずれも細かい筆で細密に描いてある。なかでも遊女の着物の優雅な曲線のラインは彼独自のものであろう。
この時代の作品にしては色彩が鮮やかに残っている。特に赤と緑は鮮やかである。保存状態が良かったのだろう。
戦前の日本人は浮世絵を美術品として認識していなかった。初めて浮世絵の芸術性を認めたのはフランスの印象派の画家たちであった。 したがって素晴らしい作品のほとんどが海外に流出している。残念なことだが反面、保存に気が使われていて、良い状態のまま残されている。
美術館の建物は、市内に残る数少ない戦前の建物(旧川崎銀行千葉支店)を新しい建物で包み込むように設計されており、重厚な雰囲気を持っている。
2024年1月6日(土)から2024年3月3日(日)まで千葉市美術館にて開催中。
(2024.2.22)
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