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ブルターニュ展 / アートを楽しむ / 大安寺の仏像展 / エゴン・シーレ展 / 佐伯祐三展


---ブルターニュ展---

憧憬の地 ブルターニュ
    チラシ(表)

憧憬の地 ブルターニュ
    チラシ(裏)

憧憬の地 ブルターニュ
    チラシ(中)




ブルターニュの光と風
    チラシ(表)

ブルターニュの光と風
    チラシ(中)

ブルターニュの光と風
    チラシ(中)

《憧憬の地 ブルターニュ》ーーー 国立西洋美術館

ブルターニュ地方はフランスの北部、イギリス海峡の入り口にある。

ケルト海に突き出た複雑な海岸線はここが豊かな海産物の産地であることを、低い丘が連なる大地は農産物の産地であることを示している。

モネ、ゴーガン、ルノワール、ベルナール、リヴィエール、ドニ等の画家たちがこの地で絵を描き、後世に残してくれた。

3月から6月にかけて同時にふたつの美術館で開催している。国立西洋美術館では160点以上の作品が、SOMPO美術館では70点の作品が展示されている。

西洋美術館ではポール・ゴーガンの「海辺に立つブルターニュの少女たち」をメインに、モネの「嵐のペリール」やベルナールの「ポン=タヴェンの市場」などが展示されている。

シャルル・コッテの「悲嘆、海の犠牲者」は北の海で遭難した漁師の死を嘆いている様子を描いた作品だが、同時にキリストの昇天を暗示しているようにも感じた。

西洋美術館に展示された作品は数が多いため、いちどきに見ると疲れる。休みやすみ見るか、2度に分けて来館するとより理解が深まると思う。

開催期間 2023年3月18日(土)から2023年6月11日(日)まで国立西洋美術館にて。

(2023.5.21)




ブルターニュ地方
     ブルターニュ地方関連地図



《ブルターニュの光と風》ーーー SOMPO美術館

SOMPO美術館のメインはアルフレッド・ギユの「さらば!」である。これは荒天の海に遭難した息子の死を嘆く父親を描いたもので、悲痛ではあるが荒れる海の表現に神々しいものを感じた。

荒れる海を描いたギュダンの「ベル=イル沿岸の暴風雨」や、シャルル・コッテの「嵐から逃げる漁師たち」のように厳しい自然とを描いた作品が印象に残った。

リュシアン・シモンの「じゃがいもの収穫」に代表される大地の恵みを表現した作品も数多く展示されている。

ブルターニュ地方の特徴は厳しいと同時に恵みを与えてくれる自然なのであろう。

アドルフ・ルルーの「ブルターニュの婚礼」やリュシアン・シモンの「ブルターニュの祭り」には土俗的で原始的なものを感じた。

ブルターニュ地方というのはフランス人に心の故郷みたいな印象を与える地名なのではないだろうか。

  ー  ー  ー  ー  ー

日曜日の上野公園は午前中からすごい人出で、美術館の中に入ってもそれは続いていた。絵は人の背中越しに見るか、観客の波が途切れるのをじーっと待ってから見るしかない状態だった。

対してSOMP美術館は新宿西口の地上に出てすぐのところにあるにもかかわらず空いていて、日曜日の新宿駅西口の雑踏とは正反対のシーンとした空間に身を置いて絵画を鑑賞することができた。

開催期間 2023年3月25日(土)から2023年6月11日(日)までSOMPO美術館にて。

(2023.5.21)

憧憬の地 ブルターニュ ブルターニュの光と風

---アートを楽しむ 見る、感じる、学ぶ---

アートを楽しむ
    チラシ(表)

アートを楽しむ
    チラシ(裏)

佐伯祐三--休息(鉄道工夫)
 佐伯祐三---休息(鉄道工夫)

アーティゾン美術館は東京駅八重洲口から少し行ったところの高層ビルの5階にある。3階で受付を済ませ、一旦5階に上がってから4階、3階と降りながら鑑賞する。

チラシのトップがベルト・モリゾの「バルコニーの女と子供」という絵という点からもそれほど有名な作品展とはいえない。

館内にはセザンヌ、ユトリロ、モネなどの印象派の作品から、ピカソ、カンディンスキー、マチスなどの個性的な作品、日本人の画家では藤田嗣治、坂本繁二郎、藤島武二などポピュラーな作品が数多く展示されている。これだけの作品を一度に見る機会はなかなかないだろう。

興味深かったのはパブロ・ピカソの初期の作品が何点かあったことだ。「腕を組んですわるサルタンバンク」とか「茄子」とか「カップとスプーン」など、何が何だかわからない時代に入る前の初々しいピカソを見ることができる。

ゴッホの「モンマルトルの風車」やゴーガンの何点かはこれがゴッホ?、これがゴーガン?と思うほど作風が違う。画家が自分の作風を確立する前の作品で新鮮な感じがした。

今日の収穫は藤島武二の「黒扇」と佐伯祐三の「休息(鉄道工夫)」を見られたことだ。

藤島武二の「黒扇」は実物は初めて見る。白い衣装の女性が黒い扇子を手にした作品で、画集で見るよりずっと清々しい印象を受けた。

佐伯祐三の「休息(鉄道工夫)」は今年初めの東京ステーションギャラリーで開催された大規模な展覧会にも出展されていなかった作品である。ルオーの影響を受けたと思われる力強いタッチで描かれているが、細部を見ると佐伯独特の色使いをしていてこれはルオーにはないものである。

開催期間 2023年2月25日(土)から2023年5月14日(日)までアーティゾン美術館にて。


手紙(坂本繁二郎) 手紙(安井曽太郎)

(2023.5.2)


---大安寺の仏像展---

大安寺の仏像展ポスター
多聞天立像
不空羂索観音菩薩立像
大安寺の仏像展ポスター

日差しはあるが北風が強い。千代田線根津駅から坂を上ると上野寛永寺に出る。東京藝術大学をつらぬく道を真っすぐ行くと左手に東京国立博物館がある。

現在、特別企画として、京都大安寺の仏像8点と瓦6点が展示されている。

大安寺は日本最初の国立寺院として639年に舒明天皇によって発願された寺である。

展示されている仏像はいずれも一本の木から削り出したものである。

それぞれの仏像を間近にみると木目にはヒビが入り、ところどころシロアリに蚕食されている。1,400年の月日の重みを感じる。

それぞれの仏像に対面すると、当時の仏師たちが天皇の発願により彫り上げたものだけになんとも言えない気品がある。そこに立っているだけで自然である。

この空間にいるだけで古来から伝わる静けさに触れる思いがする。

開催期間 2023年1月2日(月)から2023年3月19日(日)まで東京国立博物館にて。


増長天立像 楊柳観音菩薩立像

(2023.2.21)


---エゴン・シーレ展---

エゴン・シーレ展ポスター
エゴン・シーレ展ポスター裏
エゴン・シーレ




エゴン・シーレ作品
エゴン・シーレ展ポスター エゴン・シーレ展ポスター



レオポルド美術館展という副題を入れたのはエゴン・シーレだけでは美術館の壁を埋めきれなかったためだろう。

エゴン・シーレの作品は全体の半分ほどで、あとはグスタフ・クリムトやコロマン・モーザー、リヒャルト・ゲルストルら同時代の画家たちの作品が展示されている。それぞれ個性的な画家たちなのだが、エゴン・シーレの絵の前に立つと一瞬ドキっとする。彼の個性は際立っている。

「自分を見つめる人II (死と男)」という作品は男の後ろに死神が憑いている。まるで自分の死を予感しているかのようである。

22才の作品「ほおずきの実のある自画像」は男か女かわからない風貌の自分が描かれている。28才で死んだことを知っているわれわれはその顔に死相を感じてしまう。予想に反して小さい作品なのに驚いた。8号程度の大きさのキャンバスに描かれていた。

数点紙に鉛筆で書いた作品があった。単純な鉛筆画は画家のデッサン力を見極めやすい。鋭い線のタッチは並の画家ではないな、とわかる。それにグワッシュで軽く色をつけているものもあった。それをみると、この画家の色彩感覚が普通ではないということがわかる。

彼は同時代の画家ばかりでなく、現在に至るまで独特の位置を占めている。

開催期間 2023年1月26日(木)から2023年4月9日(日)まで東京都美術館にて。


 エゴン・シーレ作品  エゴン・シーレ作品

(2023.2.21)


---佐伯祐三展---

ポスター1

 


ポスター3

 


汽船(部分)

 


ガス灯と広告(部分)

 


下落合風景(部分)
新聞屋





東京駅
ポスター2 ポスター4

佐伯祐三の絵は各地の美術館に点在していて、それらをまとめて見る機会はめったに無い。佐伯ファンである筆者も前回まとめて佐伯の絵を見たのは10年以上前になる。今回の展覧会は貴重なチャンスである。

佐伯祐三は1898年4月28日に生まれ、1928年8月16日に亡くなっている。わずか30年の間にこれだけの業績を残して亡くなった。夭逝した天才は35才で亡くなったモーツァルトをはじめ、エミリー・ブロンテ、30才。石川啄木、26才、金子みすゞ 、26才、中原中也、30才、等々数多くいるが、佐伯祐三もそのひとりである。

丸の内北口ロビー

佐伯の業績の際立った部分は1924年にパリに渡ってから亡くなるまでの4年間に凝縮している。病気のため、4年間のうち実質の活動期間は2年半。佐伯はこの2年半の間に怒涛の勢いで描いた。それらはいつでも我々の心と脳を揺さぶり続ける。

東京ステーションギャラリーは東京駅の構内にある。丸の内北口の一角に入り口がある。入ってからエレベーターで3階まで上がると会場がある。3階から1階まで階段を降りると次の会場がある。外から見て想像していたよりだいぶ広い。

手すり

階段の途中にオブジェのような手すりがあったり、レンガが剥き出しになっていたりする。駅舎そのものが重要文化財なのである。

構内はレンガでできている。古いので穴があいたり、鉄骨が剥き出しになっていたりする。

レンガをバックにする佐伯の絵は凄みを帯びて見える。こればかりは他の会場では味わえない。

レンガの壁

古いレンガの壁ををバックに「パリの裏通り」「ピコン」「街角の広告」といった暗い色調の絵を見ていると、佐伯が生きた時代に迷い込んだような気になる。生きている佐伯祐三がそこにいて、一心不乱に絵を描いているような気になる。

あるサイトに「東京では意外にも、2005年に練馬区立美術館開館20周年を記念して開催された展覧会「佐伯祐三---芸術家への道---」以来、18年ぶりの佐伯祐三の本格的な回顧展となります」と書いてあったが、筆者は2009年に新宿歴史博物館で「佐伯祐三展---下落合の風景---」というのを見ている。それにしても14年ぶりである。人気がある割にはなかなか開催されないのが佐伯祐三展である。原因は全国の美術館に散らばった作品の輸送にお金と手間がかかるせいではないかと想像する。今回の主催者であるJR東日本は安全に輸送することにかけてはプロである。今回の展覧会を開催してくれたことに感謝したい。

2023年1月21日(土)から2023年4月2日(日)まで東京ステーションギャラリーにて開催中。必見。

(2023.1.24)

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