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北斎とジャポニスム / タイ〜仏の国の輝き〜 / 雪村展 / シャセリオー展


---北斎とジャポニスム---

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チラシ裏

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入口

看板だけでは内容がわからない展覧会。国立西洋美術館の周りの木々はすっかり紅葉していた。

公開してから2ヶ月経った木曜日だというのに中はまっすぐ進めないほど混雑していた。一番混んでいる紹介のコーナーは飛ばして進んだ。

進んで行くうちにこの展覧会の企画のすごさに驚いた。おびただしい北斎の絵と並んで関連する西洋の画家たちの作品が並んでいる。

セザンヌ、ゴーガン、ゴッホ、ドガ、モネ、等々。よくこれだけの量の絵を集めたものだ。

セザンヌの有名な「セント・ヴィクトワール山」の構図が北斎の「富嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二」とそっくりだったり、ドガの踊り子のポーズが北斎漫画の力士のポーズとそっくりだったりする。

おびただしい量の北斎の絵が印象派の画家たちの絵に真似されている。日本人にオリジナリティがないと言った者は自分の浅はかさを暴露したようなものだ。

公園

保存がいいのだろう。北斎の絵の彩色が素晴らしい。

「富嶽三十六景」に使われているブルーは独特で印象派の画家たちのどの作品と比べても魅力があった。

開催期間は2017年10月21日(土)から2018年1月28日(日)まで。国立西洋美術館にて開催中。

(2017.12.14)



---タイ〜仏の国の輝き〜---

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チラシ裏

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連日35℃の暑さ。上野の国立博物館の広くて薄暗い静けさが頭に浮かび、何をやっているかも調べずに行ってみた。

上野駅に着いてからが大変だった。人混みと喧騒とホコリと暑さ。博物館までの道のりが長かった。

博物館に入ったらそこはオアシスだった。休日の昼近くだというのに観客が少ない。ゆっくりと仏像たちを見ることができた。
観客の中には日本のお坊さんやオレンジ色の袈裟を着たタイのお坊さんもいた。

タイの仏像はどれも石像だった。硬い石を滑らかに削って磨いてある印象だ。透明感を感じた。

仏像はいずれも唇が厚く口角が上がっていて微笑むか微笑む直前のような表情をしていた。顔は日本の仏像に比べて細面で女性的だ。

立像はどちらかの足に体重をかけているため腰をくねっているかのように見える。

坐像はあぐらをかき左手は手のひらを上に正面に置き、右手は右膝のあたりに垂らしている。日本の坐像でこういう姿勢のものはなかったのではないだろうか。

タイの仏像は優しい。見て回るうちにこころが穏やかになっていく。

帰りがけに常設展の日本の仏像を見た。顔が四角く唇がまっすぐで何事かを決意しているような表情をしていた。

開催期間は2017年7月4日(火)から2017年8月27日(日)まで。東京国立博物館にて開催中。

静けさと安らぎを求める方ぜひ。

(2017.7.17)

壁 壁 ハガキ1 ハガキ2


---雪村展---

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シャセリオーに続いて初めて聞く画家、雪村である。パンフレットにも「ゆきむらではなく、せっそんです」と書いてある。そう書くからにはほとんどの人が知らないことを想定しているのだろう。

雨の降る土曜日の朝、空いていることを願いつつ上野の森の一番深いところにある東京藝術大学大学美術館へ行った。美術館は大学の門を入ってすぐのところにある。「当大学に関係のない方は入場できません」という立て看板がある。一瞬いいのかな、と思いながら入場口へ向かった。

雪村という画家はどういうひとなんだろう。説明書によると1504年(室町時代)常陸国部垂(茨城県常陸大宮市)に佐竹氏の一族の長男として生まれる。本来なら長男として家を継ぐはずだが、雪村の父は他の妻の子を跡取りとしたため幼くして夢窓疎石を開山とする正宗寺に入って禅僧として修行する。亡くなったのは1584年だから当時としては異例の長寿だったことになる。

禅僧として修行したひとだけに理屈にとらわれず突き抜けたところのある絵という印象を受けた。

龍の頭に乗って他の龍を退治するひとの絵を何枚も描いている。手に持った瓶の中の液体を振りかけている。壮大なイメージの絵である。

大きな鯉にまたがった仙人が鯉と一緒に空中に飛び出している。この絵の背景にはどういう物語があるんだろう。

リアルさとは一線を画した奔放なイメージの絵。1500年代に生きた画家のイメージには現代人も追いつくことができない。

文明は進歩するが文化は進歩しない。素晴らしいものが生まれたらそれは永遠に素晴らしいものである。

開催期間は2017年3月28日(火)から2017年5月21日(日)まで東京藝術大学大学美術館にて開催中。

案内 ハガキ1 ハガキ2

(2017.5.13)




---シャセリオー展---

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シャセリオーという画家は知らなかった。

説明書によるとフランス・ロマン主義の異才といわれた画家で1819年-1856年に生きた人で、37才で早世している。早熟の天才だったのだろう。会場に入るとはじめに展示されているのは16才の時の自画像である。

繊細で傷つきやすい表情、衣服の質感のリアルさ。16才の作品とはとても思えなかった。

肖像画の得意な画家だったのだろう。後に描いた肖像画はいずれも見事で表情や肌の色のリアル感、衣服の質感が見事に表現されている。「アレクシ・ド・トクヴィルの肖像」や「ドサージュの肖像」は現代人がそこに描かれているように感じた。「カバリュス嬢の肖像」はチラシやポスターになっているようにその特徴が実によく出ている。

「泉のほとりで眠るニンフ」は肖像画ではないが見事に裸婦が描かれている。19世紀の宗教画の裸婦ではなく現代のリアルな裸婦である。

5月5日、こどもの日の朝、混んでいるのではと思いながら行った展覧会は思いの外空いていて各作品をゆっくり見ることができた。
大作「カバリュス嬢の肖像」や「泉のほとりで眠るニンフ」の前には誰もおらず、1人でじっくり鑑賞することができた。
10時半ころ外に出ると駅の改札口から濁流のように人が流れ出てきた。連休中でも開館直後に行けばゆっくり見ることができる。

開催期間は2017年2月28日(火)から2017年5月28日(日)まで国立西洋美術館にて開催中。

庭 (2017.5.5)


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